ソーシャルメディアの勢いを目前にしてGoogleがやるべきことはなんだろう?

Share このエントリーをはてなブックマークに追加

4~5年前のGoogleといえば負けなしだった。
突出した技術力、革新的アイデア、優秀なビジネスモデル、素敵なオフィス。誰もが憧れる世界有数のブランド企業だ。
主な収益は広告モデル2種。AdWordsと AdSense。この広告収益が売上の90%以上を占めており、年間276億ドルの売上があるというんだからすごい。
しかし、そんな天下のGoogleを取り巻く環境も、少しずつ変わりつつあるようだ。大きなポイントとしては以下の3点。


トラフィック流入元の変化
【参考リンク】
【データ公開】トラフィックの主役はサーチエンジンからソーシャルメディアに変わるのか、を検証してみた。

各サイトへのアクセス元といえばGoogle様様の状態で、流入元比率の大半を担っていた。しかし今は少し状況が違う。流入元としてソーシャルサービスが割り込んでくる時代がきた(しかし、あくまで比率なので相対的な数値)。これは、ユーザーが情報を求めて訪れる先としてソーシャルサービスを選択するようになった、さらにはソーシャルサービスによって受動的に人々の目に情報が飛び込んでくるようになったことが考えられる。


滞在時間の変化
【参考リンク】
滞在時間でFacebookがGoogle、Yahooを抜き首位に

Facebookが滞在時間でとうとう首位に躍り出た。しかし同時にGoogleも伸びは見せている。つまりユーザーがWEB上で過ごす時間の絶対数は増えているが、増加分の大半をFacebook等のソーシャルサービスに占められている可能性が高い。


有能な人材の流出
【参考リンク】
全従業員給与一律10%アップ~Googleの人材流出の悩み

Googleから有能な人材が流出し、その多くがFacebookに流れているという事実。理由は断言できないが、新しいソーシャルWEB時代の波に出遅れていることがひとつの要因かもしれない。Googleに在籍するようなアルファギークは、常に先進的で革新的なワクワク感を求めているはず。それ以外にも、金銭的なものも大きな要因ではあると思うが。



というわけで、Googleにとって悪い流れが迫ってきた感はある。広告で収益を上げている以上、今後も自社サービスに、より多くのユーザーを集めることが最大の目的であることに変わりない。




Googleに迫る脅威とは何か?その正体はソーシャルサービスの台頭か


検索サービスに対する脅威
トラフィック流入元や滞在時間の変化を考えた時に、Google検索が情報コンテンツへの入口ではなくなりつつあるということが考えられる。これまでユーザーは情報を入手するために能動的に検索行為を行ってきた。しかし、現代では必ずしも能動的でなくとも、ソーシャルサービスにアクセスすれば自動的に情報が飛び込んでくる。
Twitter、Facebook、Tumblrをひとたび開けば、受動的なユーザーでも情報の波にさらされる。躍進を続けるQuoraのようなソーシャルQ&Aサービスの集合知もWEB検索の競合となり得る。

そのような状況の中で、ユーザーがWEBの入口に立った時、第一の選択肢としてソーシャルサービスにアクセスする割合が高くなっているのではないだろうか。Google検索がブラウザのホーム画面に君臨し続ける意味はなくなりつつあるのかもしれない。
ただし、検索システムが完全に必要でなくなるわけではない。人間の探求心は絶対になくならないわけで、あらゆる情報を集約したデータベース的存在として、辞書のような役割で力を発揮するはず。ただし、前回のエントリーで考察したように、検索機能のソーシャル化も必須の課題であるし、今よりももっと便利な拡張機能を整備していく必要はあると感じる。新手のスタートアップがソーシャルサーチを先取りして、検索市場に乗り出してきている背景も無視できない。


その他サービスに対する脅威
また、検索事業以外のGoogleサービスに関しても、各種ソーシャルサービスが競合となり得る。
GmailはFacebook Message、Twitter DMにシェアを奪われる可能性が高い。テキストコミュニケーションはソーシャルかつ端的な方向へ進みつつある。これらが社会インフラとなった時、アカウントさえ存在すればメールアドレスすら必要がなくなる時代がくる。
Google CalendarやPicasaに関しても、Facebookがそれぞれの代替機能を要している。強力なソーシャルグラフを備えているため、スケジュールや写真を常にリアルタイムで共有でき、それが人々を惹きつけている。
Google ReaderやBloggerは、TwitterやTumblrの情報発信性とMicroBlog機能に存在を脅かされているし、YouTubeもリアルタイム性とソーシャル性を内包したUstreamがライバルとなるだろう。

ソーシャルWEBという人を介したリアルタイムの情報網がWEBを席巻し、Googleサービスのシェアを多少なりとも奪っていくのは事実。



今後Googleが目指すべき方向性は?

では、今後Googleはどのように対処していくべきだろうか?


受動的ユーザーへの情報提供の仕組み
FacebookのニュースフィードやTwitterのタイムラインは、まるでTVのように、開いただけで情報が溢れてくる。しかもそこには、有名人の近況、知人のくだらないギャグ、有益な情報コンテンツ、全部ひっくるめて存在するのだ。対してGoogle検索は、開いただけでは何も提供してくれない。さらに能動的にキーワードを打ち込んだとしても、その結果で得られるのは情報コンテンツのみ。そこにコミュニケーションは存在しない。この違いは大きい。

このままでは、Google検索には本当に目的を持って調べものをする人しか訪れなくなる。目的なしで辞書を読む人はいない。Googleは辞書ではなくTVに近づく必要があるのではないだろうか。

それを実現する為には、ユーザーに対して、精度の高い情報レコメンドの仕組みを確立しなければいけない。そして、レコメンドの仕組みは、収益源である広告配信にもそのまま応用できることを意味する。現在、ソーシャルメディアが発信する高度なターゲティング広告は、最も注目されている広告モデルである。

そして今後の展開を考えた上で、Chrome OSの登場と普及率は、大きな影響力を持つことになると考えられる。仮に、ブラウザベースのこのOSがWindows並の普及に成功した場合、PCユーザーの大多数がGoogleアカウントで日々の活動を行うことになる。WEBブラウジング、Mail、スケジュール、写真、ドキュメント、あらゆるツールがクラウドで展開され、Googleアカウントに一元化される。そうなれば、様々なユーザー行動を収集することができ、レコメンドアルゴリズムを構築する手助けになる。(もちろん、その上でソーシャルプラットフォームが融合すればなおさら強力。それは後述。)

Googleは世界中の膨大なWEBサイトを日々最速でインデックスしている。それをレコメンドによる情報提供という形で活かすことはできるはずだ。ユーザーの行動ログを収集すれば、それに合わせた最新クロール情報の通知機能も実現できそう。その他に例えば、全ユーザーのWEBブラウングを可視化して、リアルタイムなサイト視聴率のようなデータも提供できれば面白いかもしれない。


自社ソーシャルプラットフォームの確立
WEB上での人間関係図から派生するシェアが大きなトラフィックを生み出し、人々はソーシャルプラットフォームに長く滞在する。
また、そこにはコミュニケーションが生まれ、ユーザーの個性がより表面化する。前述のような、単純なユーザーの行動履歴から収集できる情報は限られている。真のユーザー属性とは、ファンページやLike・シェアから読み取れる趣味趣向、購買履歴、ゲームのプレイジャンル、最終的には個々の発言分析までを行って、ユーザーの属性をラベル付けしなければならないはずだ。そうすることで、より強力で精度の高いレコメンドが可能になる。

しかし、ソーシャルグラフの形成で、Googleは出遅れている(Google Buzzは失敗と言っていい)。その分野で最も先行し、力を持っているのはFacebookだ。果たして、Googleはこの6億人の巨大プラットフォームからユーザーを取り込むことができるだろうか?

Googleの強みは、既に多岐にわたるクラウドサービスを所有しており、これらを一から構築する必要がないこと。Facebookが持ち合わせていないツールもたくさんある。そこに人間関係のレイヤーが付加されることにより、単一的な消費や管理ではなく、ユーザー間のリアルタイムなコンテンツシェアが可能となり、既存サービスの利用価値も高まる。

とにかく、Googleは出来るだけ早くソーシャルの仕組みを構築する必要がある。その為にはやはり、Chrome OSの成功が鍵を握るのではないか。


検索機能の拡張
検索行為は今後も絶対的に必要であるし、利用者が絶えることはないだろう。だからこそ、メイン事業の強化も優先的に行っていただきたい。Google検索は2010年に検索ツールの導入を行った。リアルタイム検索、期間指定、ワンダーホイール、インスタントプレビュー etc … 過去に比べれば幾分か便利になった。ユニバーサル検索も完成形に近い。しかし、まだまだ検索体験を進化させることはできるはずだ。
Google Gogglesによる画像認識検索や、精度の高いGoogle音声検索は、近い将来に実現するだろう。長年に渡り全力で取り組んできた、検索体験高速化にも磨きをかけていただきたい。blekkoが提供しているような上級者向けのスラッシュタグの導入も面白いかもしれない。

いずれにせよ、Googleは既存の検索システムを、さらに使いやすく拡張していくことにも注力しなければならない。
加えて、ソーシャルサーチの必要性に関する考察は、前回のエントリーを参考に。



以上が本エントリーの結論。
とはいえ、Googleは検索事業のみで莫大な収益を上げており、現在も急成長中。様々な新規市場に参入し、拡大を続けていることに変わりはない。巨人Googleはまだまだ元気だ。
懸念といえば、有能な技術者の流出によって、革新的サービスがそもそも実現できなくなってしまうことか。
これから先は、新たにスタートするローカル戦略のGoogle Offersや、噂されている新SNSのGoogle Meも控えている。Googleの今後に期待したい。

0 Response to "ソーシャルメディアの勢いを目前にしてGoogleがやるべきことはなんだろう?"

コメントを投稿